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雑感)三重県議会で病院の BCP に関する質問があった件について

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今日たまたま次のような記事を見つけました。

「三重県議会 病院の BCP 策定 3 割 4 年間で全院目指す」(伊勢新聞 web サイト:2019 年 12 月 4 日付け)

https://www.isenp.co.jp/2019/12/04/39234/

(ニュースサイトの記事はそのうち削除される場合が多いので勝手ながら魚拓を取らせていただきました。 —> https://megalodon.jp/2019-1206-1130-42/https://www.isenp.co.jp:443/2019/12/04/39234/

2019 年 11 月の三重県議会において廣耕太郎議員(新政みえ)が災害対策に関する質問をしており、防災対策部長と福祉医療保健部長がそれぞれ次のように回答しています。

【防災対策部長】

「千葉県では(9 月の台風15号で)道路が寸断して現場到着が遅れ、停電の復旧が妨げられた。このため、事前の伐採に加え、電力設備に近い県管理道路の倒木などを早急に除去できる協定を結びたい。中部電力や関西電力と事業負担の割合などを協議している」

【福祉医療保健部長】

「県内の病院全てでBCPを策定することが重要だが、県内で策定した病院は93のうち30にとどまる」
「策定に向けた指針をまとめ、地域別の研修会も実施して策定を促したい」

災害対策に関して、県からこのような前向きな発言があったのは良いことだと思いますが、一方でちょっとした懸念も感じます。
「策定に向けた指針をまとめ」という発言がありましたので、三重県として何らかの指針を作るということなのでしょうが、医療機関を主な対象とした BCP に関する指針(ガイドライン)は既にいくつも作成・公開されています。とりあえず Google で「医療 BCP ガイドライン」で検索すれば、次の 3 つはすぐ見つかります。

東京都福祉保健局「医療機関の事業継続計画(BCP)策定ガイドライン」
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/smph/iryo/kyuukyuu/saigai/zigyoukeizokukeikaku.html
(「一般医療機関向け」と「災害拠点病院向け」があります。)

厚生労働省「BCP の考え方に基づいた病院災害対応計画作成の手引き 」(平成 25 年 3 月)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000089048.pdf

鳥取大学医学部附属病院救命救急センター「医療機関における災害対応のための BCP 作成の手引き」
https://www.med.tottori-u.ac.jp/emergency/report.html
(「災害拠点病院以外」向けと「災害拠点病院以外」向けがあります。)

したがって、三重県内の病院で BCP への取り組みが進まないのは指針が足りないからなのだろうか?という点については疑問を感じます。既存のガイドラインを活用することで出来ることもたくさんあるのではないでしょうか?

もちろん、三重県から新たなガイドラインが発表されることで新たなノウハウやヒントが提供され、それによって医療機関における BCP や災害対策が進むのであれば、それに越したことはありませんので、多くの医療機関にとってプラスになるようなガイドラインが作成されると良いと思います。

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国土交通省が空港向け BCP『A2-BCP』ガイドライン案を公表

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《国土交通省が空港向けの BCP ガイドラインとして、 『A2-BCP』ガイドライン案を 2019 年 11 月 15 日に公表しました。発表資料は次のとおりです。

国土交通省: 「A2-BCP」 ガイドライン(案)を公表します ~ 自然災害に強い空港を目指して ~
https://www.mlit.go.jp/report/press/kouku09_hh_000143.html

(URL が変わるかも知れないので勝手ながら魚拓を取らせていただきました。 —> https://megalodon.jp/2019-1227-1446-06/https://www.mlit.go.jp:443/report/press/kouku09_hh_000143.html

 

「A2-BCP」というのは「Advanced/Airport – BCP」の略だそうで、同年 4 月 10 日に発表された『災害多発時代に備えよ!!~空港における「統括的災害マネジメント」への転換~』という文書の中で提唱されているもので、国土交通省による造語のようです。本ガイドライン(案)の中では次のように定義されており、また含むべき内容や構成もガイドライン(案)の中で示されています。

空港全体としての機能保持及び早期復旧に向けた目標時間や関係機関の役割分担等を明確化したもので、「B-Plan」、「S-Plan」等により構成。全ての空港利用者(滞留者)の安全・安心の確保、背後圏の支援、航空ネットワークの維持を目的として、空港ごとに策定。関係機関が個別に策定する BCP(個別 BCP)と連動することにより、当該空港としての事業継続を目指す。

発表資料によると、本ガイドラインに関しては 2018 年 9 月に発生した台風 21 号による空港への被害を契機に検討が始まったそうで、確かに先般の台風被害における教訓が取り入れられた内容となっています。

過去の災害から学んでこのようなガイドラインが発表されるのは有意義だと思いますが、一方でガイドラインが発表されるたびに新たな概念やモデルが増えると、混乱を招くのではないかという懸念も多少感じます。

 

(参考)国土交通省: 災害多発時代に備えよ!!~空港における「統括的災害マネジメント」への転換~ (2019 年 4 月 10 日発表)
http://www.mlit.go.jp/report/press/kouku09_hh_000130.html

(URL が変わるかも知れないので勝手ながら魚拓を取らせていただきました。 —> https://megalodon.jp/2019-1227-1447-59/www.mlit.go.jp/report/press/kouku09_hh_000130.html

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書籍紹介『”今”からできる!日常防災』池田書店

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かつて私自身が編集に関わらせていただいた書籍を紹介したいと思います。
災害に対して備える人が少しでも増えるように、防災に関する敷居をできるだけ低くしたい、という意図に基づいて作られた本です。kindle 版も出ています。

私自身の名前は表に出ていませんが、内容に間違いがないかどうか、誤解やミスリーティングを招くような記述がないかどうか、などのチェックと修正を担当させていただきました。

防災に関する書籍は既にいろいろ出版されていますが、読みやすさを重視して情報量を絞り込んでいることや、比較的難易度が低く、多くの方にとって「いま自力でできること」に特化してまとめたという点でユニークな書籍なのではないかと思います。

全体の構成は次のようになっています。

  • 第 1 章 想像する
  • 第 2 章 備える
  • 第 3 章 知る
  • 第 4 章 知識を深める
  • 第 5 章 身につける
  • 第 6 章 やってみる

通読しなくても興味があるページだけ拾い読みしていただければ、その分だけ役立つように作られています。多くの方々に手にとっていただき、少しずつでも災害に対する備えを進めていただければと思います。

 

【書籍情報】

永田 宏和(監修)(2019)『“今”からできる!日常防災』池田書店

《Amazon リンク》

 

合同会社 Office SRC 代表 田代邦幸

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