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非営利組織はどのように事業継続マネジメント(BCM)に取り組むべきか

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本稿は、拙書『困難な時代でも企業を存続させる!! 「事業継続マネジメント」実践ガイド』(セルバ出版)の一部に手を加えたものです。

当サイトにアクセスしてくださった皆様の中には、政府や自治体などの公的組織や NGO などといった、非営利組織の方々もおられるかと思います。そこで非営利組織における BCM についても触れておきたいと思います。

結論から申し上げると、BCM の基本的な考え方や方法論は非営利組織に対しても同じです。ただし次項で説明するとおり、営利企業と非営利組織との間で事情が異なる部分が二点ありますので、これらに留意すべきかと思います。

 

営利企業の BCM と非営利組織の BCM との違い

一つめの違いはお金に関することです。営利企業と非営利組織とでは収益や資金繰りなどの構造が大きく異なります。特に公的組織であれば倒産や破産の心配がありません。

二つめの違いは、これは非営利組織の中でも特に自治体や政府機関などの公的組織に関して言えることですが、大規模な災害が発生したときに、自組織の事業継続だけでなく災害対応のための業務が発生するということです。特に自治体においては、自組織が被災して通常通りに業務を遂行できないような状況の下で、地域防災計画に規定されている大量の災害対応業務を遂行しなければなりません。このような事情を踏まえて、内閣府(防災担当)から地方自治体向けに、BCM に関する手引や参考資料などが多数発表されています(詳しくは内閣府の Web サイトをご確認ください)。

 

BCM は非営利組織にも通用する方法論

BCM の「B」はビジネスの頭文字であり、ビジネス=営利目的の活動という認識から、BCM は営利企業のためのものだと思われる方も多いのではないかと思います。ちなみに内閣府(防災担当)から発行されている地方自治体向けの手引などでも、対象が非営利組織であることを考慮して「事業継続」の代わりに「業務継続」という表現が用いられています。

一方で筆者の知る限り、外国では非営利組織に対しても BCM という用語がそのまま使われているようです。これまで英国など英語圏における消防や自治体、議会などの事業継続に関する事例を、文書やプレゼンテーションなどでいくつか見てきましたが、いずれも非営利組織でありながら Business Continuity と表現されいました。

BCM に関する国際規格「ISO 22301」も、非営利組織が対象に含まれることを明らかに考慮して書かれています(※)。このような状況を見ても、BCM の考え方や方法論が非営利組織に対しても適用できることが分かります。したがって、前に述べた二つの違いに留意していただければ、当サイトに掲載している内容や、BCM に関する多くの参考書などに書かれている内容は、非営利組織の皆様にとっても参考になるはずです。


※)ISO 22301 では「組織」(organization)という用語の定義に次のような注釈が付けられており、BCM に取り組む主体のことが一貫して「組織」と記述されています(下の引用部分は JIS Q 22301:2020 より)。

組織という概念には,法人か否か,公的か私的かを問わず,自営業者,会社,法人,事務所, 企業,当局,共同経営会社,非営利団体若しくは協会,又はこれらの一部若しくは組合せが含まれる。ただし,これらに限定されるものではない。

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本稿は、拙書『困難な時代でも企業を存続させる!! 「事業継続マネジメント」実践ガイド』(セルバ出版)の一部に手を加えたものです。是非拙書もお読みいただければ幸いです。

 

合同会社 Office SRC 代表 田代邦幸

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