まず重要な前提として、この本が「ISO 22301 による認証取得のためだけの本ではない」という点は強調しておきたいと思います。
日本における非常に残念な誤解のひとつが、「マネジメントシステム規格は認証取得のためだけに使われるものだ」というような思い込みです。実際には、規格では国際的に合意された用語の定義や、取り組み方の枠組みなどが提供されており、認証取得するか否かにかかわらず、広く活用されるべきものです(実際に諸外国ではそのように活用されています)。
ところが日本では、前述のような誤解が根強く残っているために、認証取得を目指さない人や組織は規格を読まないし、規格に関連する参考書も読まない、という状況が続いています。
この問題については下の動画でも語っておりますので、お時間がありましたらご視聴いただければ幸いです(写真をクリックすると YouTube のサイトが開きます)。
さて、前置きが長くなりましたが、今回紹介させていただく本は、JIS(日本産業規格)のマネジメントシステム規格に合わせて、日本規格協会から出版されている一連の書籍群のひとつです。私自身、これ以外にリスクマネジメント(JIS Q 31000)および情報セキュリティ(JIS Q 27001)など、いくつかの書籍を持っていますが、いずれも規格の制定に関わった方々を著者に迎えて作られているので、これらの規格に関わる仕事をする人にとっては必読本となっています。
本稿で紹介させていただく本に関しても、3 名の著者はいずれも JIS Q 22301 素案作成委員会のメンバーであり(委員長は渡辺先生)、また JIS 規格の元となっている ISO 規格を制定するための委員会にも参加されているので、この規格のことを最も熟知されている方々と言えます。
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【書籍情報】
中島一郎・岡部紳一・渡辺研司(2021)『ISO 22301:2019 (JIS Q 22301:2020) 事業継続マネジメントシステム 要求事項の解説』日本規格協会
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本書はもともと ISO 22301 の 2012 年版に合わせて出版されていましたが、ISO 22301 が改訂されて 2019 年版に、これを元に制定された JIS Q 22301 も改訂されて 2020 年版となったことを踏まえて、新たに出版されました。
いま私の手元に新旧 2 冊が並んでいますが、本の厚みが概ね 3 割増くらいになっています(価格は約 4 割増)。
本来、規格というものは、規格本文だけ読めば内容を正しく理解できるように書かれているべきだと思いますが、実際にはなかなか難しいものがあります。しかも、もともと英語で書かれている ISO 規格を JIS 化する際に、和訳によって理解しにくくなっている部分もあります(これは規格の翻訳の質が低いという意味ではなく、翻訳によって意味やニュアンスなどが伝わりにくい部分もあるので、意味が 100% 伝わる翻訳が不可能だという意味です)。
本書では、規格の開発に関わっていた著者らが、そのような部分を(ある程度の背景事情も含めて)丁寧に解説してくださっているので、本来この規格が何を求めているのかを理解する上で非常に有用です。
そして、「本来この規格が何を求めているのか」≒「効果的に事業継続マネジメントに取り組むためには何が必要か」という関係が成り立ちますので、BCMS の認証取得を目指すかどうかは関係なく、事業継続マネジメントに取り組む全ての方々にとって、本書は間違いなく役に立ちます。
また、第 4 章は「ISO 22301 についての Q&A」となっており、日本で多くの方々が抱いていると思われる 16 の疑問に対して、19 ページを割いて回答されています。これらも事業継続マネジメントに対する理解を深める上で大変有用だと思います。企業をはじめとして多くの皆様に活用していただきたい書籍です。
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事業継続マネジメント(BCM)に関するガイドブックを出版させていただきました。特に中小企業の皆様が自力でに取り組まれることを想定して執筆させていただきましたので、お役立ていただければ幸いです。
田代邦幸(著)『困難な時代でも企業を存続させる!! 「事業継続マネジメント」実践ガイド』(セルバ出版)1,980 円(税込)
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合同会社 Office SRC 代表 田代邦幸