月別アーカイブ: 2020年10月

危機管理能力と事態対応能力とは別(元航空自衛隊空将の講演より)

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東京ビッグサイトで開催された「危機管理産業展(RISCON)2020」で、10/23(金)の 12 時より、元航空自衛隊空将の山田真史さんの講演を聴講させていただきました。

特に指揮官の責務という観点からいろいろなお話がありましたが、やはり自衛隊で司令官を務めておられた方の話には重みがあります。

特に印象に残ったのは、「危機管理能力と事態対応能力は別物だ」ということでした。

個人的な見解としてではありますが、山田さんによると「事態対応能力」とは、発生した事態に対して情報収集と分析を行い、必要に応じて計画を修正し、命令を実行し、成果分析や情報発信を行うという一連の活動を通して事態を終着点に導く能力で、これに対して「危機管理能力」とは、事態に対する計画立案と予防措置ができる能力との事でした。

私自身はあまりこのように区別して考えたことはありませんでしたが、とても説得力があり、腑に落ちました。企業であれば、どちらかというと危機管理能力は経営層や上級管理職層、事態対応能力はより現場に近い実務レベルに求められる能力だと思いました。

 

私自身も、自衛隊を退職された後に、自治体の危機管理鑑や企業の危機管理担当などとして活躍されている方々と一緒に仕事をさせていただいた経験が何度かあり、そのような方々から私自身も学ばせていただきました。自衛隊でのノウハウや経験を生かして、自治体や企業で働く方が増え、そのような方々から危機管理、緊急事態対応、災害対応等に関するノウハウや心構えを学ぶ人が増えることが、社会全体の対応力を引き上げていくことになるのではないでしょうか。

これからも多くの退職自衛隊の皆様に、様々なフィールドで活躍していただきたいと思います。

 

 

合同会社 Office SRC 代表 田代邦幸

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「10 年後の危機管理担当者が困らないために」

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10 月 23 日に東京ビッグサイトで開催された「危機管理産業展(RISCON)2020」におけるセッションのひとつ『事例から学ぶ「検証」の重要性』で、リスク対策.com 編集長の中澤さんが、かつて雑誌『リスク対策.com』で新型インフルエンザ対応の記録をいかに残すか、という主旨の特集を組んだことに触れておられたので、久しぶりに本棚から引っ張り出してみました。

こちらがその雑誌です。2010 年 7 月 25 日号(Vol. 20)で、なんと特集のタイトルが「10 年後の危機管理担当者が困らないために」でした。

中澤編集長の予言が的中した!と申し上げるつもりはありませんが、活動の記録や、事後検証(After Action Review)の重要性を再認識するためにも良い内容だと思います。お持ちの方はあらためて読み返してみてはいかがでしょうか。

 

合同会社 Office SRC 代表 田代邦幸

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寄稿> 論文を通して知る、企業のレジリエンスに関する研究の現状

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リスク対策.com Web サイトに連載記事を掲載していただきました。

【海外のレジリエンス調査研究ナナメ読み!】
第 122 回:論文を通して知る、企業のレジリエンスに関する研究の現状
Conz 他 / A dynamic perspective on the resilience of firms: A systematic literature review and a framework for future research

ビジネスや経営学の分野において、企業のレジリエンスはどのように定義され、概念化されているかを探るために、関連する論文について系統的文献レビューを行った結果に基づいて書かれた論文です。

本論文には、収集された 775 本の論文の中から検討対象として絞り込まれた論文 66 本に記述されているレジリエンスの定義が全て列挙されています。また、これらの論文における様々な定義や概念を包含するような、企業のレジリエンスのフレームワーク案が提示されています。

このような論文を読むと、企業や組織のレジリエンスに関する定義や概念がいかに多様化しているか、これらに関する研究がいかに多くの分野や学会に分散しているか、改めて分かります。

下記 URL をクリックしてお読みいただければ幸いです。
https://office-src.biz/3mqdjbv

 

合同会社 Office SRC 代表 田代邦幸

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陸上自衛隊の仮設浴場の現物を拝見

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毎年恒例の「危機管理産業展(RISCON TOKYO)2020」で、陸上自衛隊の仮設浴場が展示されていました。

大規模災害が発生した際などに被災地に設営されるものですが、万が一の軍事行動で部隊を展開した際にも全く同じように設営されるそうです。

仮設浴場なので、もっと簡素なものかと思いましたが、蛇口やシャワーなども銭湯などで使われているものと同じような一般的なものが備えられていて、ちゃんと普通の風呂でした。
(実際に設営される際には、この浴槽とシャワーが備えられたテントがもう一つ設営されるそうです。)

ボイラーと発電機。

こちらが貯水槽。10kl 入るようです。

スタッフが 7 人いれば 3 時間程度で設営できるそうです。

こういう設備の出番がないのが一番ですが、災害派遣などで今後も活躍される機会があると思います。がんばっていただきたいと思います。いつもお疲れさまです。

 

合同会社 Office SRC 代表 田代邦幸

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Incident Command System Field Guide 入手

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米国で標準採用されている緊急事態対応システムである Incident Command System (ICS)がコンパクトな冊子にまとめられた、「NIMS Incident Command System Field Guide」を入手しました。

この冊子の存在を知人から聞いて、すぐ Amazon で注文したのですが、外国からの輸入となったようで、届くまで一ヶ月以上かかりました(9 月 8 日に注文して 10 月 19 日に到着)。

このように片手に収まる大きさで、リング綴じになっています。

中には組織図や説明、チェックリストなどがコンパクトにまとめられています。

 

私自身がこれを緊急事態対応の現場で使うことはありませんが、ICS の内容を勉強するのに役立つと思って購入しました。私が購入した時点での価格は税込み 2,901 円でした。

緊急事態対応のためのマニュアルをコンパクトにまとめる際のお手本としても参考になるのではないかと思います。

ところで、これを手にとったときに Emergency Response Guidebook (ERG) が iOS アプリになっていることを思い出したので、App Store で「NIMS ICS」で検索してみたところ、やっぱりありました。こちらは税込み 1,840 円。

ざっと見てみたところ、冊子と同じ内容がアプリに収録されているようです。

アプリの方が読みたいページにアクセスしやすいですし、チェックリストもボタンのオン/オフになっていて使いやすいです。

【参考】

 

合同会社 Office SRC 代表 田代邦幸

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寄稿> 中小企業のレジリエンスと競争力に影響を与える因子は何か?

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リスク対策.com Web サイトに連載記事を掲載していただきました。

【海外のレジリエンス調査研究ナナメ読み!】
第 121 回:中小企業のレジリエンスと競争力に影響を与える因子は何か?
Gunasekaran 他 / Resilience and competitiveness of small and medium size enterprises: an empirical research

マサチューセッツ大学ダートマス校の研究者3人による論文の紹介です。

論文の前半では他の研究者による論文のレビュー結果から、中小企業のレジリエンスと競争力に影響を及ぼすと考えられる因子を抽出した上で、後半部分ではこれを検証するために地元の中小企業を対象として実施したアンケート調査の結果を報告しています。

下記 URL をクリックしてお読みいただければ幸いです。
https://office-src.biz/31ocTu7

 

合同会社 Office SRC 代表 田代邦幸

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YouTube> BCM においてリスクアセスメントはどんな風にやればいいのか

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YouTube の『事業継続マネジメントについて語りつくすチャンネル』に新しい動画をアップロードしました。

第 11 回: BCM においてリスクアセスメントはどんな風にやればいいのか

今回は BCM におけるリスクアセスメントの考え方や方法論について語っております。
第 9 回「目標復旧時間をどのように決めるか」および第 10 回「BCP では被害想定をどう使うか」とも関連の深い内容ですので、こちらと合わせてご覧いただけると、より腑に落ちやすくなるのではないかと思います。

《参考》

 

合同会社 Office SRC 代表 田代邦幸

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BCI 日本支部 2020 年度第 3 回定例会を開催しました

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一昨日、私が事務局を務めております BCI 日本支部の、今年度第 3 回の定例会を開催しました。

今回は「事業継続ソリューション」を主なテーマとしました。これは BCI の Good Practice Guidelines 2018 年版では PP4 の「Design」の段階で説明されているものです。さらに、前回同様に新型コロナウイルスに関する情報共有の時間も設けました。

開催報告は BCI の Web サイトに掲載されています。当日の説明に使用したスライドと、定例会の録画(動画)も見られるようになっていますので、ご興味がありましたら下記 URL にアクセスしていただければと思います。

https://www.thebci.org/news/bci-2020-3.html

(動画にアクセスするためには氏名とメールアドレスを入力する必要がありますが、BCI 会員でなくても視聴可能です。)

合同会社 Office SRC 代表 田代邦幸

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寄稿> 国連機関による、災害をもたらすハザードの定義と分類

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リスク対策.com Web サイトに連載記事を掲載していただきました。

【海外のレジリエンス調査研究ナナメ読み!】
第 120 回:国連機関による、災害をもたらすハザードの定義と分類
UNDRR / Hazard Definition & Classification Review Technical Report

前回に続いて国連防災機関(United Nations Office for Disaster Risk Reduction:略称UNDRR)から発表されたレポートの紹介です。

現在は地震や津波、洪水など災害をもたらし得るハザードの分類方法や用語、定義などが統一されていないため、世界規模で災害の被害状況を正確に集計・分析できないという問題があるそうです。そのような問題意識に基づいて、世界各国の主要な災害情報データベースや様々な資料を調査したうえで、統一的なハザードの分類方法や定義が提案されています。

下記 URL をクリックしてお読みいただければ幸いです。
https://office-src.biz/2FqWL3k

 

合同会社 Office SRC 代表 田代邦幸

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書籍紹介『世界に通じる危機対応 ISO 22320:2011 危機対応に関する要求事項 解説』林春男(編集委員長)

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手前味噌ですが私自身が関わった書籍のご紹介です。

危機対応(緊急事態対応)に関する国際規格「ISO 22320」が 2011 年に発行され、その内容を変えずに和訳したものが日本産業規格「JIS Q 22320」として 2013 年に発行されたことを受けて、これを日本で普及させることを目指して作られた本です。ISO の委員としてこの規格の制定に参画された林春男先生に編集委員長をお願いし、一般社団法人レジリエンス協会の有志 7 名からなる「危機対応標準化研究会」にて執筆しました。

ISO 22320 は、効果的な危機対応を実現するために最低限考慮すべき事柄として、指揮・統制のあり方、危機対応に用いる活動情報処理のあり方、部局間・組織間の協力および連携のあり方、などについてまとめられた規格です。危機事象の種類(災害や事故など)や組織の種類(公的機関や民間企業など)にかかわらず汎用的に適用できる規格となっています。

この規格の JIS 化に合わせて本書を企画した問題意識については、林先生が「はじめに」で次のように述べておられます。

世界の先進国では,どのような種類の危機が発生しても対応可能であり,対応にかかわるすべての組織に共通する一元的な危機対応体制が採用されている.先進国の中では我が国だけが例外である.その原因に,従来の個別的な対処方法でもこれまで様々な種類や規模の危機を乗り越えてきたという成功体験があり,改める必要性が見いだせないことがある.しかし,今後予想される大規模災害を考えると,危機対応の標準化はレジリエンスの向上には不可欠であると考えられる.

 

本書の構成は次のようになっており、規格の内容は第 2 章で解説されています。

  • 第 1 章 危機対応に本当の専門家はいない
  • 第 2 章 ISO 22320 の解説
    • 4. 指揮・統制に関する要求事項
    • 5. 活動情報に関する要求事項
    • 6. 協力及び連携に関する要求事項
  • 第 3 章 規格は使わなければ意味がない
  • 第 4 章 ISO 22320 を現場に活かすには
  • 付録 ISO 規格開発手順

私自身は第 2 章の「4. 指揮・統制に関する要求事項」の執筆を担当させていただきました。また林先生に第 1 章と第 3 章の執筆をお願いしました。

本書全体を通して、単に要求事項の解説にとどまらず、これらを自治体や企業などの組織で実践するための留意点やヒントをできるだけ記述するようにしています。

特に第 2 章においては、規格の内容に基づく解説に加えて、具体例のひとつとして米国で標準的に採用されている「Incident Command System」(ICS)の要点を紹介しています。ICS は ISO 22320 よりも先に開発されたものですが、ISO 22320 の要求事項が概ねカバーされているので、この規格の要求事項を具体的にはどのように実現していくのかを考えるうえで、とても参考になります。

 

実は ISO 22320 が既に 2018 年に改定されており、規格の構成や内容が大幅に刷新されているのですが、この 2018 年版が JIS 化される予定は今のところ無いようです(2020 年 10 月時点での状況)。したがって本書も改訂される予定がありません。個人的には 2018 年版も早急に JIS 化されてほしいのですが…….。

 

【書籍情報】

危機対応標準化研究会(編著)(編集委員長 林春男)(2014)『世界に通じる危機対応 ISO 22320:2011(JIS Q 22320:2013)社会セキュリティ – 緊急事態管理 – 危機対応に関する要求事項 解説』日本規格協会。

Amazon リンク

 

合同会社 Office SRC 代表 田代邦幸

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