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ISO 22301 2019 年版における「solutions」の意味

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事業継続マネジメントシステム(BCMS)に関する要求事項を定めた国際規格『ISO 22301』が 2019 年 11 月に、これに関するガイドラインである規格『ISO 22313』も 2020 年 2 月に、それぞれ改訂されました。この改訂において BCMS の概念や方法論が大きく変わったわけではありませんが、いくつかの用語に関しては重要な変更が行われています。その中で本稿では「solutions」という用語について解説したいと思います。

ISO 22301 および 22313 では、項番 8.3 のタイトルが「Business continuity strategies and solutions」となっています。これは改訂前の旧版では「Business continuity strategies」であり、両規格の日本語訳である JIS 規格では「事業継続戦略」と訳されています。改訂版ではこれに「and solutions」が追加されました。

では「Business continuity strategies」と「Business continuity strategies and solutions」とでは何が違うのか?という話になりますが、結論から申し上げると、これらの実質的な意味はほとんど変わらないと考えて差し支えありません。

このような説明だと単に無駄な変更が加えられたように思われるかもしれませんので、このような変更が行われた背景を説明させていただきたいと思います。

この部分の改訂は、BCI から発行されている『Good Practice Guidelines』(略称 GPG)の影響を受けています。GPG の 2013 年版では ISO 規格と同様に「business continuity strategies」という用語が使われていましたが、2018 年版にむけて改訂される際に「business continuity solutions」に変更されました。このような変更が行われた理由については、GPG 2018 年版の 9 ページ目に次のような記述があります。

The previous use of the term ‘business continuity strategies’ in the Design stage of the business continuity management lifecycle has caused some confusion with organizational level strategies. Consequently, the GPG 2018 edition adopts the term “business continuity solutions”.

つまり、BCM の範疇で使われる business continuity strategies と、例えば経営戦略、ビジネス戦略といったような組織全体としての strategies との間で若干の混乱があったため、BCM の中では「strategies」という用語を使うのをやめて、これを「solutions」で置き換えたということです。つまり GPG においては「business continuity strategies」と「business continuity solutions」とは同じ意味で使われています。

その後、ISO の委員会で ISO 22301 の改訂に関する議論が始まったときに、BCI のメンバーから、同様の用語変更が提案されたそうです。この提案を行ったのが具体的に誰なのかは聞いていませんが、ISO においてこの規格を担当している技術委員会 TC292 には、BCI のメンバーが複数含まれていますので、それらのうちの誰かだと思われます。しかしながら「strategies」を「solutions」で置き換えることについては合意に至らず、いわば折衷案のような形で「strategies」が残されたまま「solutions」が追加された形となったようです。

そして合意され正式に発行された ISO 22301 においては、8.3.1 節に次のように説明されています。

The business continuity strategies shall be comprised of one or more solutions.

つまり「business continuity strategies」は 1 つまたは複数の「solutions」の集まりだと定められています。また、もし solutions が 1 つだけならば strategies = solutions ということになります。

また両規格のどこにも、strategies や solutions の違いや要件が説明されている箇所はありませんし、多くの箇所で「strategies and solutions」としてまとめて扱われています。そう考えると BCM においては、strategies と solutions との間に実質的な違いはほとんど無いと言ってよいでしょう。

実務的には、自組織における BCM の中では「business continuity solutions」という用語を使っておき、外部の方々に対してなにか説明する必要があるとき(例えば認証審査など)には、その solutions を指して「これがうちの strategies です」と言えばよいでしょう。

もちろん strategies、solutions という単語そのものが持つニュアンスの違いがありますので、全く同じと言うと語弊があると思いますが、実務上問題となるような違いはないと考えられます。どちらを使うべきか迷うくらいでしたら、前述のとおり GPG に述べられている理由から、「solutions」を使うことをお勧めしたいと思います。

なお現時点(2020 年 3 月)ではまだ JIS 規格の方が改訂されていませんので、この solutions がどのように訳されるかは分かりません。直訳すると「解決策」などということになりますが、事業継続に関して「解決策」というのは違和感があります。どう訳されるのでしょうか?

 

合同会社 Office SRC 代表 田代邦幸

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