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書籍紹介『土地の「未来」は地形でわかる』渡辺満久(著)

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著者は変動地形学が専門だそうですが、私自身は「変動地形学」という分野の存在を、本書を読むまで知りませんでした。著者によると、「変動地形学を専門とする研究者が日本に何人いるか、指折り数えてみても、せいぜい 30 人程度」だそうです。

「変動地形」というのは現在進行で動いている、プレート運動による地殻変動が作った地形のことで、地殻変動によってどのような地形が形成されるかを扱う学問分野が「変動地形学」ということになります。なお変動地形学は「地質学」とは全く異なる学問分野だそうです。

本書の中心的な話題は活断層であり、活断層とはどういうものなのか、どのようにして形成されるのか、などを詳しく理解するために大変有用です。これまで活断層による地震がたびたび発生していることから、活断層という用語は広く知られていると思われますが、それがどのようなものかを具体的に知っている人は恐らく少ないでしょう。

著者によると、「日本周辺においては、最近の約 50〜70 万年前以降は(プレートの動きが)ほとんど変わっていない」ため、これ以降の時期に動いたことが確認できた断層は活断層だということになるそうです。したがって、数 10 万年前に洪水などで形成されたことが分かっている平坦な地表面を変形させるように存在している断層は、活断層であると判定できることになります。そのようなものであれば、ボーリング調査など行わなくても、航空写真などから判別できるそうです。

本書では、実際の地形に変動地形がどのように表れているか、どのように活断層を判別できるかが、いくつかの実例が写真や地形図などを使って説明されており、とても分かりやすいと思いました。

なお、ややこしいことに研究者によって活断層の定義が異なるとの事なので、例えばテレビなどで誰かが「活断層」について話しているときに、それが本書で説明されている「活断層」とは微妙に違うかも知れない、という可能性は知っておいたほうが良さそうです。

 

【書籍情報】

渡辺満久(2015)『土地の「未来」は地形でわかる』日経 BP 社

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合同会社 Office SRC 代表 田代邦幸

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