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書籍紹介『フルキャリマネジメント―子育てしながら働く部下を持つマネジャーの心得』武田佳奈(著)

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著者はキャリア重視の「バリキャリ」でも、私生活重視の「ゆるキャリ」でもない新しい価値観として、仕事やキャリアにも、暮らしや子育てにも意欲を持って取り組む「フルキャリ」の存在に注目しています。本書はそんな「フルキャリ」の実態をアンケート調査によって明らかにしつつ、本人が、そしてその上司がどのように取り組むべきかを提言しています。

著者は野村総合研究所のコンサルタントであり、野村総研が 2018 年に実施したアンケート調査の結果に基づいて構成されているので、本全体がこのアンケート調査の報告書という見方もできるかと思います。

最近「ワークライフバランス」や「働き方改革」というキーワードをよく目にするようになりましたが、これらが単に労働時間短縮や残業削減、産休・育児休暇の取得の話だと思われている方々も、まだまだ多いのではないかと思います。

上司(特に男性の)が上のような理解をしていると、家事や育児との両立に取り組んでいる部下に対して、仕事量をセーブしたり、仕事の成果に対する期待値を下げるような配慮をしがちであり、(それがありがたいと思われる部下もおられるでしょうが)フルキャリの部下にとってはかえってもどかしいと思われてしまう、という現実があるようです。

仕事もキャリアも子育てもあきらめたくないと言うと、「二兎を追うな」というような反応をされる方も少なくない中で、本書はいかにうまく二兎を追うかを考えるヒントになる本なのではないかと思います。

調査結果のなかで特に個人的に注目した点のひとつは、出産・育児休暇の後に復職した女性の中には、実は自分自身が「フルキャリ」を目指したいのかどうかがよく分かっていなかったという方々が意外と多く、そういう方々は休暇を迎えるにあたり、上司に何を相談したいか、何を伝えるべきなのか、よく分からなかったそうです。本人ですら自分の本音が漠然としているのですから、上司としても難しい対応を迫られるのだろうと思います。

本書ではそのような、一般には気づかれにくい課題にも目を向けつつ、「ワークライフバランス」に「グロース」(growth:成長)を加えて「ワークライフ&グロースバランス」という概念を提案し、個人として、上司として、企業として何をすべきかが説かれています。

 

【書籍情報】

武田佳奈(2019)『フルキャリマネジメント―子育てしながら働く部下を持つマネジャーの心得』東洋経済新報社

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合同会社 Office SRC 代表 田代邦幸

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