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太陽フレアによる事業中断の可能性

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本日、「京大天文教室 in 丸の内」の第 8 回となる、柴田一成教授の「太陽フレアと宇宙天気予報」を受講しました。

(2019 年度の「京大天文教室 in 丸の内」の詳細は下記 URL に記載されています。)
https://www.saci.kyoto-u.ac.jp/event/e_event/place/kaf/10257.html

今回は太陽フレアと、それによる磁気嵐の影響についてとても分かりやすく解説してくださいました。磁気嵐に関しては、知識としては知っていたものの、発生した場合の影響についてはあまり具体的に考えたことがありませんでした。しかしながら、もし大規模な磁気嵐が発生すると、変電所の変圧器の破損による大規模停電や、広範囲にわたる通信障害、GPS の機能不全などが発生する可能性があるとのことです。

なお、磁気嵐による障害は過去に度々発生しているそうで、講座で紹介された事例だけでも次の例があります。

  • 2003 年 10 月 28 日に大規模な磁気嵐が発生し、カナダで高緯度域を飛ぶ航空機との通信の一部に障害が発生した(飛行には影響なし)。
  • 1989 年 3 月 13 日に発生した磁気嵐の影響で、カナダのケベック州で 9 時間にわたって大規模停電が発生し、600 万人に影響が発生した。

私自身の周囲では、事業継続に関する文脈で磁気嵐が話題になったことはありませんが、英国の National Risk Register や米国の規格 NFPA 1600 では、次のとおり磁気嵐による影響に関する言及があります。BCM 関係者としては、事業中断を招きかねないリスクとして認識しておく必要があると思います。

  • 英国政府が発表している「National Risk Register」の 2017 年版では、緊急事態を引き起こしうるリスクのひとつとして、太陽フレアを含む「Space weather」がリスクマトリクスに記載されており、これに関する説明に全 71 ページ中 2 ページが割かれています。

National Risk Register of Civil Emergencies – 2017 Edition
https://www.gov.uk/government/publications/national-risk-register-of-civil-emergencies-2017-edition

  • 全米防火協会から発行されている、事業継続に関する規格「NFPA 1600」の 2019 年版では、リスクアセスメントにおいて評価すべきハザードのリスト(項番 E.7.4.2.1)の中に、「Geomagnetic storm」(磁気嵐)が記載されています。

NFPA 1600 – Standard on Continuity, Emergency, and Crisis Management
https://www.nfpa.org/codes-and-standards/all-codes-and-standards/list-of-codes-and-standards/detail?code=1600

また、講座では太陽の動向を知るために役立つ Web サイトを教えてくれました。これらのサイトもたまにはチェックしておく必要があるかなと思います。

  • 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)宇宙天気予報センター
    http://swc.nict.go.jp/
  • 宇宙天気ニュース(鹿児島工業高等専門学校の篠原学教授による)
    http://swnews.jp/
  • SolarHam – 様々な研究機関などの情報源から得られる太陽の最新情報を掲載し続けている Web サイト
    https://www.solarham.net/

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台風 19 号の影響でスバルの工場が操業停止

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スバルでは台風 19 号の影響で、16 日午後 3 時すぎから群馬県太田市の本工場を含む複数の工場で操業を停止したそうです。操業再開は 25 日の見込みとのことです。

【台風19号】スバル、車生産停止 部品取引先被災が打撃(下野新聞 Web サイト 2019/10/23 付記事)
https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/235065

(ニュースサイトの記事はそのうち削除される場合が多いので、勝手ながら魚拓を取らせていただきました。
https://megalodon.jp/2019-1024-1938-12/https://www.shimotsuke.co.jp:443/articles/-/235065

上の記事によると、被害を受けたサプライヤーが相当数ある中で、代替のきかない重要なサプライヤー数社が冠水による事業中断に陥ったとのことで、スバルから重要サプライヤーに対して設備保全担当社員を送り込んで支援しているようです。

このような事案が発生すると、「事業中断に陥ったこと」事態が必要以上に注目され、「このようなことにならないよう万全の災害対策を」みたいな意見が多数出てくるのでしょうが、サプライチェーンの脆弱性あれだけ大規模な被害をもたらした台風ですから、多くの企業が事業中断に陥るのは、(たとえ BCM の取り組みが行われていたとしても)ある程度やむを得ないと思います。事業中断に陥ってはいけないのではなく、事業中断をどの程度の期間に収めればよいかを考え、ある程度の事業中断は許容するという共通理解のもとに、サプライヤーを含む関係者が協力しあって事業の再開・復旧を目指せれば良いのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

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